宮部みゆき 新刊 荒神 朝日新聞出版
7月7日月曜日より放送のTBS月曜ミステリーシアター『ペテロの葬列』も、少しずつ佳境に入り、原作者の宮部みゆきによる独特の世界観も、ますます深みにハマってゆく中での8月20日水曜日...。
宮部みゆきの新刊『荒神』(朝日新聞出版)が発売。
すぐに購入して読み始めたものの、失礼ながら、いつものごとく宮部みゆき特有の怪談を交えた摩訶不思議な世界観に戸惑ってしまったこともあって、先日読み終えたばかりで...。
江戸時代初期の元禄太平の世の半ばにおける怪談話を織り交ぜた冒険群像活劇、とでもいうのかなあ。
かの物語は、東北の小藩・香山藩の山村・仁谷村が、一夜にして壊滅状態となることから始まって...。
しかも、隣りの永津野藩は、過去の因縁から香山藩と反目することが長く続いていて...。
お家騒動、奇異な風土病などの騒動といった、あらゆる不穏な事情の交錯するこの土地柄にあっても、永津野藩の専横な藩主側近の弾正や心優しきその妹・朱音らをはじめ、朱音を慕う村人と用心棒・宗栄、病みついた小姓・直弥や、山里の少年・蓑吉、謎の絵師・圓秀らが、今後を見据えて考えをめぐらせるも虚しく、山での凶事に巻き込まれていくことに。
追い討ちをかけるかのように、"化け物"が突然現れることになって...。
やがて、山のふもとに生きる北の人たちは、突如訪れた"災い"にそれぞれ考えをめぐらせることになり、"化け物"に立ち向かうことになってゆく、という流れに。
結局何よりも怖いのは人間か...。
突然の異変による壊滅では、住居は押しつぶされ、村人たちは熱湯を浴びせられたような火傷と異臭の中で次々と殺戮されていく衝撃の冒頭から、たちまち物語の中に引き込まれてしまって...。
人物は最初それぞれ無関係に登場して物語が進行し、彼らの身辺で異変の前触れの相次ぐことに伴い、それぞれ人物の視点からあらゆる場面が描かれて、場面は交互に転換、次第に異変は形をなし、謎と緊張感は高まっていくことになるから、彼らの不安や不審や恐怖も共有することになる盛り上げ方は、さすがだった。
人間の抱く憎しみと愚かさが"化け物"となり、世界を滅亡の淵へ導くありさまは、まさに恐ろしい。
同時にそれを打ち破る愛と叡智が人には宿ることも啓示されているのは、我ながら嬉しかった。
そして、すべての登場人物は、最後に一点に収斂し、 物語が読者の予想を裏切りつつも、希望の余地を残す結末を迎えることになったのは、なぜか安堵してしまった。
物語の全体を通しての世界観に関して...。
序盤から中盤は、あの2008(平成20)年7月発売の『おそろし 三島屋変調百物語事始』(角川書店)をより重くしたかのよう。
終盤は、スタジオジブリ制作で宮崎駿監督の映画で、1984(昭和59)年公開の『風の谷のナウシカ』と1997(平成9)年公開の『もののけ姫』を観ているかのようだった。
いずれにせよ、あの「3.11」以来の現代日本を生き抜く多くの人たちに、大きな勇気と希望をもたらす一冊でとして加わるのかもしれないや。
2014-09-05 |
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