川村元気 億男 感想
これは、翌年2015(平成27)年春公開予定で、佐藤健と宮﨑あおいの初共演で話題の永井聡監督の映画『世界から猫が消えたなら』の前哨戦(?)ともなる作品とでもいうのかなあ。
いや、かなり大袈裟か???
そう、あのBRUTUS誌に連載された映画プロデューサー・川村元気による小説第二作『億男』(マガジンハウス)が、10月15日水曜日に発売されたという。
実際に購入して読んでみたところ、小気味よいテンポが快感で、あっという間に一気読みできる爽快感とともに、事の本質の奥深さを実感できるが、嬉しいや。
かの物語の主人公は、ごく平凡な図書館司書の一男。
弟の借金2000万円を肩代わりし、妻や娘とも別居。 昼も夜も働きながら養育費と借金返済に人生を費やし、月に一度だけ娘と会うことが許されている身の上。
そんなある日のこと、思いもかけずに宝くじで3億円を当てることに。
しかし、喜びに浮かれる間もなく、不安に襲われてしまって...。
やむなく一男は「お金と幸せの答え」を求めて大富豪となった親友・九十九のもとを15年ぶりに訪問。
ところが、九十九は何とホームレスに凋落。
しかも、「お金と幸せの答えを教えてあげよう」と言わんばかりに、九十九は一男の持参した3億円を持ち逃げして失踪してしまった。
急転直下に陥った一男は、九十九を探しに奔走。
自身の「お金と幸せの答え」のみならず、九十九の抱える秘密とを模索しながら、ソクラテス、ドストエフスキー、アダム・スミス、チャップリン、福沢諭吉、ジョン・ロックフェラー、ドナルド・トランプ、ビル・ゲイツなど、数々の偉人たちの言葉に触れながらの、30日間にわたるお金の冒険へ...。
その中では、「人生に必要なもの。 それは勇気と想像力とほんのすこしのお金だ」というチャールズ・チャップリンの名言と、落語のモチーフが随所に垣間見ることのできる描写が、印象深かったなあ。
全体を通しての率直な印象としては、お金の稼ぎ方ではなく、人生そのもの。
同時に、日本人の感性からすれば、小説自体が落語そのものであるかのよう。
それらを前提とした上で、「お金を使っていかに生きるのか」という考察本、と断言するのは大袈裟か???
たしかに書店へ足を運んでも、お金儲けのノウハウ本、貯蓄や投資やFXなどの実践本は並んでいる反面、「お金」の本当の意味を考察する本は見つからない。
そういった点でも、本書はとても深いことを考えさせてくれる、ありがたさを実感させてくれて...。
その一方で、「家族の崩壊と再生」の物語もサイドストーリーとして描かれていて、なかなか一筋縄ではいかない小説ゆえに、各章ごとに起こる不意打ちに何度も心を揺さぶられ、わずかながらの光の射すことになるラストシーンには、心からの涙。
これは、お金儲け話ではなく、友情や家族愛の物語として心地良い感動を与えてくれる名作。
やはり、2012(平成24)年10月25日木曜日に発売の小説第一作『世界から猫が消えたなら』(マガジンハウス)が、2013(平成25)年の本屋大賞にノミネートされたことで、再出発(?)したかのような勢いあってのことなのかもしれないや。
2014-10-25 |
共通テーマ:日記・雑感 |
nice!(0) |
コメント(0) |
トラックバック(0) |
編集
コメント 0