かぐや姫の物語 アカデミー賞 感想
振り返ってみれば、2013(平成25)年11月23日土曜日よりの公開の映画『かぐや姫の物語』を、初日に観に行った時の、あの感動...。
あの『竹取物語』を原作とした高畑勲監督・スタジオジブリ制作の日本のアニメーション映画としては、まさに最高傑作...。
ほどなく、同年12月にWOWOWで前後編の2回にわたって放送された『高畑勲、『かぐや姫の物語』をつくる。~ジブリ第7スタジオ、933日の伝説』...。
そして、前年2014(平成26)年12月3日水曜日に、本編とドキュメンタリーが、それぞれDVD/Blu-rayとして発売。
さらに、2015(平成27)年に入って...。
第87回アカデミー賞・長編アニメーション賞ノミネートによる期待が高まって...。
2月23日月曜日、ハリウッドのドルビー・シアターにて世界最大の映画の祭典「第87回アカデミー賞」授賞式...。
受賞したのは、前年2013(平成25)年度に続いてのディズニー作品である、『ベイマックス』...。
やはり個人的には、『かぐや姫の物語』に、受賞してほしかったなあ。
何よりも、あのアニメーターの描いた線を生かした手描き風のスタイルが使用されて、背景も動画に近いタッチで描かれ、両者が一体となり「一枚絵が動く」ような画面、特に、"生き物の躍動感"、目に優しかったのが本当に嬉しかった。
ハリウッドから見れば、ただの日本人としての美的感覚に過ぎない???
しかし、だからと言って否定したくない。
さて、肝心の物語を振り返ってみると...。
竹の中から生まれ、すぐに成長して美しい娘に育ち、求婚者たちを次々と振ったあげく、満月の夜、迎えにきた使者とともに月へと去ってしまうという、古典的に語り継がれている魅力はもちろんのこと...。
「姫の犯した罪と罰」というキャッチコピーが象徴するように、かぐや姫はいったい何のために地球にやってきて、なぜ月へ帰ることになったのか、この地で何を思い生きていたのか、といったありのままが描かれていて、誰も知ることのなかった「かぐや姫の心のうち」を垣間見ることになって...。
そして、どのカットも、先の手描き独特の繊細で柔らかなタッチ...。
生き物の躍動感、音楽も、伸び伸びとした曲、悲しい曲、琴の音色、いずれも素晴らしいものばかり。
並行して、かぐや姫(声:朝倉あき/幼少期:内田未来)の幼少よりの愛らしさ、翁(声:地井武男・三宅裕司)と媼(声:宮本信子)の姫への深い愛情、次第にかぐや姫の心が変化していく様子も...。
特に、最後の瞬間...。
心が引き裂かれるような、あの月を背景に駆けるシーン。
月から観客を眺める赤子のかぐや姫は、私はいつか、また地上に転生しますよ、と語りかけて...。
「この世は穢れてなどいない」との言葉、心に強く残ったなあ。
同時に、あなたたちも、すべてが露と消えるその瞬間まで、喜びとともに、悲しみや苦しみをも、しっかりと噛みしめながら、今の瞬間を生きてくださいと語りかけているようだった。
幸せとは何なのか。 生きるということはどういうことなのか。 心が揺さぶられてしまう一方だった。
物やお金や官位などに惑わされる人たちを滑稽に描きつつも、見ている自分自身も考えさせられてしまって...。
この人生で本当に大切なものは何か?
本当に、今、僕たちは生きていると言えるのか?
実際に観てよかった思える作品の一つとしてめぐり逢えて、嬉しかった。
本編を改めて鑑賞した上での、『高畑勲、『かぐや姫の物語』をつくる。~ジブリ第7スタジオ、933日の伝説』の再度鑑賞...。
奥深くなるだろうなあ。
この映画の製作にあたって高畑勲監督の3つの疑問。
1. 数多の星の中から何故地球を、日本を選んだのか?
2. かぐや姫は、月に帰るまでの歳月、何をして過ごしていたのか?
3. かぐや姫が、月世界で犯した罪と罰とは?
これらの疑問の答えを見出すべく、難解な古典文学の『竹取物語』を、アニメーション表現の限界を超える試みとして、エネルギー溢れる生きた映画として、現代によみがえらせることに挑む高畑監督と第7スタジオのスタッフの姿が...。
まさに、すべてが試行錯誤と暗中模索の第7スタジオ制作現場を密着取材した渾身のドキュメンタリー。
そして、声を担当した名優たちを緻密に演出していく様子...。
本作でも、かねてからのジブリアニメ作品の多くにみられるように、一般芸能人を多数キャスティング。
特に、その中の一人である名優・地井武男にとっては、本作が遺作に。
セリフの収録は、作画完成前に声を吹き込むプレスコ形式を採用していたため、2011(平成23)年にはすでに収録が終了しており、体調を崩す前の地井武男の演技が確認できて、ほとんどのシーンを担当。
合間を見つけて、じっくりと鑑賞しようかなあ。
2015-02-23 |
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